canon

 私が初めて自作の曲に伴奏をつけたのは、中学3年生の時。

 それまでは簡単なメロディーを歌うくらいだったのだが、その頃初めてピアノの伴奏をつけるなんてことをやってみた。頭の中に、ある種の音楽のイメージがあったとしても、それを具体的に再現する方法も知らなかったし、学校で音楽の教師に相談してみても、ヒントになるようなことなど言ってもらえなかった。
 彼らに言われたことは、作曲するには大学へ行って理論を学ばないとダメ。あらゆる楽器を学び、その特徴や役割を理解しないといけない…ということ(笑)。
 でも私は勝手に自分の曲に伴奏をつけた。数年後、私はパッフェルベルの「カノン」という曲を聴いて驚くことになった。

あの時自作の曲につけたコード進行と、カノンのコード進行が、殆ど同じだったからだ。

 カノン(canon)は規範という意味だ。音楽で使われる場合は同じ形式やモチーフを繰り返すタイプの楽曲を指す。
 規範とは基礎。骨子。最もシンプルな形を意味し、元来伝統とはその規範を一つも違わずに世代から世代へ繋いで行くことを示す。例えば、国や民族を表す特徴があるが、その特徴を繙いてみるとある決まったパターンを見ることが出来る。そのパターンこそがその民族の規範であり、知っている人がそれを見た時、相手が何者なのかが分かるのだ。

 最近、しみじみ思うことがある。

 宇宙を示す形というものがある。メタトロン立体といい、この形の中に全ての幾何学が内包されている。立体型六芒星と言い表すことが出来、二つの四角錐(ピラミッド型)が上下双方から合体した形で出来ている。
 タロットカードとは、本来その構図にこのメタトロン立体を内包しているものだった。リーダーは展開されたカードの中で強調されている形を読み取り、相談者の置かれている立場や方向性を映画のワンシーンの様に示してみせるのだった。
 それがある有名なタロットの登場により破壊されてしまったという。それ以降、図柄からは宇宙のカノンが消え、好き勝手なイメージだけで構成されたタロットが大量に出回る事態に。
 今となってはカノンを保っているタロットカードはたった一種類だけ。そのカードはマルセイユタロットと呼ばれた。故にマルセイユタロットの称号を得るためには、その構図にメタトロン立体を内包していることが絶対条件となっているのだ。

けれどこうしたことは何もタロットカードに限った話ではない。

 私のTwittreのTLには、神秘思想に傾倒する方々のツイートも多く並んでいるが(その他はゲ音系w)、そのツイートに時々一言言いたくなることがある。カバラーやユダヤ神秘思想、キリスト教についてや魔術に関することに興味を持った方達が様々な意見や感想を述べていたりする。しかしその殆どは、売っている本などで読んだだけの知識で構築した、いわばハリボテの様な知恵を使って、独自の見解か何かを新たに発見したかのように小難しい言葉で公表していたりする。
 彼らのしていることを否定はしないが、いかんせんきちんと規範を学んでいないせいで、やっぱり理解の方向性が少しずれているんである。特に私が違和感を感じるのは、流行のアニメの登場人物に神秘思想の骨子を当てはめたりすることだ。規範を学んでいれば、それらの行為にあまり意味がないことが分かるのだが…。何故なら、そのキャラクターにとある神秘思想の”特性”が似ていたとしても、そのアニメ自体に宇宙の規範との関わりが無かったりするので意味が無いのである。そういうことは全体がマッチしていて初めて成り立つのだ。タロットで言えば、ライダー版とクローリー版にマルセイユ版を混ぜて使うのと一緒である。とはいえ、かつては私も同じだったから、彼らのしていることを軽蔑したりはしないが。

だからこそ、以前は私もよく言っていた。”きちんと教えてくれる所へ行き、その道に入ってちゃんと学ばれてはいかがですか”と。

 本があるからいい、という人もいる。しかし、本には肝心なことが書いてないのである。その道に入らなければ教えてもらえないことが沢山あるのである。なのに、どういう訳かみんな私のいうことに耳を貸さないんである。しかしそのことに文句を言うと姉に一喝された。

”女のいうことなんか、誰も聞かないよ。”

確かにそうなんだろう。私、可愛げ無いし(笑)。

 そういう訳で最近は、私も何も言わないようになった。更に色々学び、少しずつでも理解が進むにつれて、何も言えなくなってく自分もいる。私が今まで信じていたことまで、無意味なことだと気づいて行く。そうして規範にさえ気づいていれば、そこにどんな色付けがなされていようと構わないということも理解する様になった。

規範…。音楽で言えばコード進行だろうか?

かつて作曲作業を始めた頃、指導して下さった先生にコード進行を知らないと言って驚かれたことがある。けれど本当に知らなかったのだ。自分が手探りで押さえていた和音とその動きをそう呼ぶと言うことに(笑)。

自分が初めて作った伴奏は、パッフェルベルの「カノン」のコード進行に良く似ていた。

そしてそのコード進行は、私の音楽の規範になっている。

パッフェルベルのカノン
http://www.youtube.com/watch?v=2EPv7FZ5sdM&feature=related
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ふう

私も昔、MIDIでカノンらしき音楽を作ろうとしたのですが、
なぜか私の作りかけたその曲は、
どんどん響きがゴージャスになっては行くのですが、
どれだけ経ってもその場で足踏みしているだけというか、
音楽としての流れがなかったんですよね。

今思うに、観音様(cannon)の助けを借りなかったから?
というのはだじゃれですが。

ちなみに、キャノン(canon)の社名の由来は、「観音」だそうです。

規範をぶちこわす流れって、昔からありましたね。
「守破離」とか。

ただし、規範を破壊し、超越する流れ全体が、
このように一つの「メタ規範」のようなものに則っていたわけですが。

それが完全に崩れたのは、岡本太郎辺りからかな。

全くの絵の初心者が何気なく描いた線の方が、
画家として名のある人の線よりも美しいことがある、
というような主張は、
それはそれで、感性の幅を広げるものになりましたが、
一方では、今でいう「ヘタウマ」こそが芸術だ、
みたいな風潮も生み出してしまったように思います。

岡本太郎は、全くそんなことは意図していなかったのでしょうけど。

彼が言いたかったのは、
プリミティブなエネルギーを制限なく解放するところに、
真の芸術性がある、
というようなことだったのではないかと思います。

規範は変わらずに受け継がれていくわけではありません。

数百年、数千年経つ間に、
日本語自体も、全く変わってしまいました。

もちろん、今でも万葉集がそれなりに読めるように、
変わらない部分もありますが。

変わらないような、柔軟に変わるような、
そういう、相反する性質を併せ持ったものが、
本当に末永く受け継がれて行かれる規範なのでしょうね。

もっとも、今ではそれすらも廃れつつあるような危機感を持っていますが。

まさに、文明の終焉の時に来ているような感じすら覚えます。

でも、それは、これから、
何か全く新しいものが生まれ出る胎動のようなものだと思います。
by ふう (2012-08-08 23:24) 

みら

ふうさん、コメントありがとうございます。

この記事、後で読み返したら、なんだか憂鬱な気分になってしまって、削除しようかな?と思っていたところです。

古いものが壊れて新しいものが生まれる…。よくわかります。けれど、その大きな流れでさえ気の遠くなる様な大いなる秩序に沿って運動しているわけでして、芸術とは本来、その大いなる秩序(神)を表したものでした。それが今はただの感情のダダ漏れみたいになってしまった。

勿論、それもいいんです。規範を知っている上でなら。問題はその規範そのものがなくなってしまったことです。

私は音楽をやっていこうと思ってはいますが、それとは別に宇宙の音楽を学ぼうと思っています。そうして少しずつ、キリスト教が破壊してしまったものを、再構築するのが役目かな、と感じています。
by みら (2012-08-09 14:58) 

moonrabbit

まぁ自分が書くのも何ですが、音楽理論なんざ後付けですからねぇ。
何でもそうですが基本があってその上に積み上げて行くのが本道だとしても、
自分が楽しむなら何でもありありです。ww
「自分は「A]より「B♭]の響きの方が来るんだよなぁ~」とか、知らない人にはオカルトな会話もまた一興。www
by moonrabbit (2012-10-06 20:15) 

みら

 Rabiさん、コメントありがとうございます~♡(^^)。

 理論にばかり気を取られていてもいい曲は出来ませんからね。両方が必要なんですよね。私は感覚ばかりで曲を作ってきちゃいましたから、自戒を込めた記事でもありますww。
 私はゲ音を作る人をマジで尊敬してます。だって、普通のミュージシャンならやらなくてもいいこと(容量の計算。システムとのすり合わせ等)まで一手に引き受けているんですから。
 特に初期の、ファミコン時代の方々は、本当に凄いと感じてます。
by みら (2012-10-07 10:32) 

remy_martin07

moonrabbitさまのところから飛んできました^^
音楽理論ですか!ピアノは幼いころからやってたりして、
高校では音楽を専攻してカノンを作曲する課題があったのですが、
授業中は決まって爆睡していて、いつも赤点でした(A;´・ω・)
ものづくりされる方ってすごいと思います!
(なんか変なコメすみません・・

by remy_martin07 (2012-11-12 21:13) 

みら

remy_martion07さん、初めまして(^^)ノ。こんにちは。

 rabiさんとこから来て下さったんですね!嬉しいです。
カノンを作曲したことがおありだなんて、凄いです。私はクラシックで育ったのですが、音大などに行くこともなく、独学で作曲とかしてました。そのうちヴォーカルスクールなどに通って、一時はライヴハウスでも歌っていたことがありました。大した歌手ではありませんでしたがww。
 ただ、母親の影響で声楽の先生とかはいい先生にお世話になってました。
 今度remyさんのブログにお邪魔させて下さいな。出来ましたらその時、remyさんが作曲されたカノン聴いてみたい!(笑)
by みら (2012-11-13 15:07) 

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